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TOP > ブックメイドTOP > 著者インタビュー ラインナップ > 第16回 佐瀬 喜市郎さん
著者インタビュー

30年にわたるCMカメラマンとしてのノウハウ・理論の集大成
「映像を哲学する」の作者、佐瀬喜市郎さん
映像を哲学する ─映像学への誘い
佐瀬 喜市郎/著
A5判 186ページ
オンデマンド印刷並製本
制作部数:100部
価格:1,365円(税込)
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「映像」を「言葉」で表現することの難しさ

長い間、電通映画社でCMカメラマンの仕事をしていました。33年の在籍中、撮ったコマーシャルは約900本以上になりますね。私が仕事の中で映像についての構想を練るとき、それはいつも「言葉」を考えることから始まりました。いくつかの「言葉」を頭の中で並べ、吟味していきました。「時間」と「映像」も、密接な関わりを持っています。映画やテレビの映像というのは、一つの映像が消えたあとに次の映像が現れる形式のメディアです。つまり、二つの映像の間には「時間」が存在しているわけです。
同じ画面のなかに対比する複数のファクターが同居している場合にも、映像と時間が結びついていることがあります。見ている人の頭の中に残っている残像、その余韻にも「時間」が強く関わっているのです。

端的な例でいいますと、同一画面上で「使用前」と「使用後」の写真を並べてみせる比較広告のことですね。「使用後」の〈いま〉と「使用前」との時間差で商品の効果を訴えるという手法です。

ムービーのカメラマンになったとき、一番に考えたのが「言葉」と「時間」をいかに映像の中に組み込むかということでした。これこそが一番のカギであります。40年以上経った今も、その思いはまったく変わっておりません。とくにCMという短詩型の映像を作っているとき、そのことを強く感じています。

映像学を具体的な事例から検証してみた

本書のもう一つの特色が、映像学の上では有名なテーマを具体的な作品から私自身が検証してみた後半部分(映像学への誘い)です。ここでは、「イマジナリライン」「ディーンの法則」「遠近感の表出」「シズル感」「立体感を探る」「対比の映像」「モーション・パラックスの活用」といったテーマについて、私自身のCM作品や海外の名画(映画)の一コマを分析して解説してあります。

たとえば、「ディーンの法則」です。六つに区切られた画面には、それぞれ独特のイメージ空間を持っているという有名な考え方ですが、実際にこの効果を検証してみた研究者はいませんでした。しかしこれまでの私の経験則から考えてみても、見事に合致することが多いのです。

「ディーンの法則」(図2参照)によると、「左上」は、ロマンティックエリアとなっています。法則に従って、女性の白い手を「左上」から口紅や乳液の瓶などに伸ばしてみましょう。すると「右上」から伸ばしたときとは明らかに違って、優しく、優美な雰囲気を醸し出していると感じませんか?(図1参照)

フェルメールの絵画を見たときに、私はこのことを確信しました。光の天才画家といわれるフェルメールは、「左上から覆ってくる光」による空気感や情感を見事に描いた画家でした。このように、「ディーンの法則」を頭に入れながら、絵画や映画の名作等をご覧になってみるのも面白いと思います。

映像の可能性について、もっと多角的に勉強してほしい

本書の前半の「言葉と映像」は、『中央評論』に、後半の「映像学への誘い」は社団法人・映画テレビ協会の『映画テレビ技術』誌に連載した原稿を収録しました。私が考えてきた映像学の集大成ともいってよい一冊です。撮影に関する約束事も詳細に記しておきました。多数収録した図版も含めて、ノウハウ満載のテキストになったのではないでしょうか。

退職後、専門学校や大学で学生たちに映像学を教えてきましたが、もっと幅広い視点で映像について学んでほしいと感じています。映像学は突き詰めると、時間論であり、まさにそれは哲学です。デジタル社会の中で映像を勉強する学生たちが急激に増えている今だからこそ、多角的な研究が必要になってくるはずです。本書がその一端になれば、こんなに嬉しいことはないですね。

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