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「神保町で作って売れる自費出版」ブックメイド事業の意義について 有限会社信山社・代表取締役 柴田信

神保町は、本の一大コンビナート

本の街・神保町の歴史というのは古く、書店街として形成されてから一世紀を越えていると言われています。最近の調査によれば、現在、神保町には33の新刊書店、141の古書店が軒を並べ、出版社・出版プロダクション・取次店・印刷会社・製本会社を加えると381の事業者が出版関連の仕事に関わっているのです。隣接する一ツ橋・駿河台・小川町・猿楽町・三崎町・錦町・西神田を加えると事業所の数は724にも及びます。まさに本の一大コンビナートの様相を呈していて、東京都千代田区の地場産業と言われる所以です。

しかし、このように世界的にも珍しい本の街・神保町に、このところ活気が見られません。長期にわたる出版業界の不況が、この特色ある本の街にも多大な影響を及ぼしているのです。とくに新刊書店については、深刻な状況にあります。出版物自体の売上高が9年連続の前年割れが続くという中で、全国の中小の書店数自体が最盛時からは半減しているのです。このままでは秋葉原・丸の内と再開発が進む周辺地域に後れを取ったまま、神保町の名は過去の遺物として語られることになりかねません。

再生のためには、神田・神保町全体の活性化が不可欠。

景気が停滞して元気がなくなりつつある神保町ですが、幸いなことに街の再生を願って実施されている活動もあります。代表的な取り組みといえば、街のイベントとして半世紀近い実績を持つ「神田古本まつり」と16年前に同時開催の形で途中参入した「神保町ブックフェスティバル」でしょう。毎年秋に開催されるこのイベントには、首都圏各地から10万人以上の活字信仰者たちが集まってきます。ふだんは元気に欠ける神保町も、この時期ばかりは昔の活気が蘇ってきて、私どもの店もお客さまで大変賑わいます。

次に取り上げたいのが、本の街・神保町のポータルサイト「Book Town じんぼう」の充実です。国立情報学研究所高野研究室の協力によってオープンしたこのサイトでは、神保町のジャンル別の古書店を案内したり、古書店の在庫情報の一括検索といったシステムをインターネット上に公開したりしています。今後は新刊書店や地域大学図書館、公共図書館と連携し、神保町全体の書物データベースの公開という理想像へ向けて少しずつ発展していく予定です。

実際、この動きを契機として三省堂書店と当店・岩波ブックセンターが在庫データを共有し、本を探す顧客に対してお互いの店を紹介しあうという画期的なサービスが生まれました。あくまで顧客の利便性を優先したこの動きは、個々店の利害よりも、来店者を地域全体で囲い込み、顧客のパイ全体を広げる効果を狙っています。

ブックメイドは、活字信仰者のための自費出版事業。

岩波ブックセンターではさらに、2005年末からブックメイドという自費出版事業を始めました。これは、最新のオンデマンド印刷技術を駆使することによって少部数(20部から対応)の書籍を廉価な価格で発行できるというもので、制作した書籍は(たとえ少部数でも)当店並びにホームページでも実際に販売するところに特色があります。本来は書物を販売する新刊書店である岩波ブックセンターが、このような事業に参入することを決めたのには二つの理由があります。

一つは、もちろん低迷する売上げ増大のための打開策の一つという経営判断です。おかげさまで昨年一年間の当店の売上げは前年月比プラスを更新しつづけるという順調ぶりではありますが、将来を見越して今から新規事業を起こしておく必要があります。幸いなことに、専門書の専門店として神田・神保町でも有数の品揃えを誇る当店の顧客は、書物のハードユーザーでもあります。書物を購入するのはもちろんのこと、同時に文章の表現者でもあるわけです。自費出版作成のニーズが非常に高いと判断しました。一年間の実績で、私のこの考えが正しかったと自負しています。

そしてさらに大切なことですが、神保町全体にとってこのようなハードユーザーの来訪数を増やすことは、街の活性化のために不可欠のテーマとなりうるのです。神保町という街が単に既存の書物を探す・購入する場にとどまらず、自らの書物を創る場となり、その書物を販売できる場に進化できれば……もっと多くの活字信仰者たちが日本中から競って集まってくることは想像に難くありません。

そんな構想を持って、私は自費出版事業「ブックメイド」をスタートさせました。書店経営の柱となる営利事業に育て上げることはもちろん、神保町活性化の一つの起爆剤としても積極的に活用していきたいと思っています。ぜひとも皆様のご理解とご協力をよろしくお願い申し上げます。

 

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